若大将シンポジウムに参加する2003年
今年のレポート

第9回アレルギー週間記念シンポジウム
主催 (財)日本アレルギー協会九州支部
STOP
THE ALLERGY

アレルギーのコントロール
あなたと医師が
一緒になって

アレルギー週間記念シンポジウム
日時 平成15年2月23日13:00〜16:30
会場 北九州市総合保健福祉センター

 《若大将からこのレポートに関して一言》

  このシンポジウムは、アレルギーに悩む一般の皆さんに正しい知識を身に付けて欲しいと
  アレルギー専門医の先生方から、ボランティアで開催していただいております。

  というのも、アレルギーに関しては特に、医師と本人や家族が協力し合って治療していかなければ
  十分な成果が上がらないものだからです。

  そういう意味でも、「このような会に参加できない方々にも皆さんから教えてあげて下さい。
  また、教えられるようにしっかり聞いて下さいね。」と西間先生も以前からおっしゃっておられました。

  という訳で、私は、このサイトを通じて皆さんに少しでもお役に立てればと考えております。

  毎年レポートを書いておりますので(多少重複することはありますが)、今回は、以前に書いていない
  内容や印象に残った部分だけを
私の言葉でレポートしています。

                          日本アレルギー協会 一般会員 須崎弘己
今年も、恒例のシンポジウムに参加してきました。

会場は、今年も満席になり、アレルギーに対する関心度が高いことがわかります。
それもそのはず、日本でもトップクラスの先生(医師)方のお話が聞けるチャンスなのです。

まず、北九州市立医療センター院長 熊澤浄一先生の開会の挨拶で始まりました。
「北九州では3回目の開催で・・・」

「アレルギーとは一体何なのか、また専門医は、それをどのように考えて、どのように対処しているかという事を聞けるチャンスだと思います。」
「そして、お話いただける先生方は、日本でも有数のアレルギーの大家であるし、地元で熱心に活躍されている方ですので、分からない事があれば質問してみて下さい。」
とのご挨拶がありました。

そして西間先生の司会でいよいよ始まります。

「前半は、内科と小児科と皮膚科で喘息と食物アレルギーとアトピー性皮膚炎、後半は、花粉症、アレルギー性鼻炎について会を進めます。」

「1966年2月20日、石崎公成、照子両博士によって、アレルギーを引き起こすIgE抗体が発見されたことを記念して2月20日は、アレルギーの日とされています。そこで、この時期に「アレルギー週間記念シンポジウム」が毎年開かれているわけです。」
日本アレルギー協会九州支部長
国立療養所南福岡病院院長

西間三馨先生

最初にご登壇いただいたのは、庄司先生です。
気管支喘息についてのお話です。
ご存知のようにゼーゼーヒューヒューいう病気ですが、気管が狭くなるとこのような症状になります。

気管の筋肉が収縮するのですが、気管内部がハレ(炎症)たり、タン等が絡まったりして細くなります。

原因としては、ダニ(これは、目に見えるダニではなくて、ほこりの中に混じっているダニの死骸など)、カビ、動物の毛などがあげられます。
国立療養所南福岡病院副院長
庄司俊輔先生
また、環境的には、大気汚染やシックハウス、ストレスなどもあります。子供に関しては、食物アレルギーも関係している場合があるようです。

そして気を付けなければいけないのは「喘息は、死に至る場合がある病気だ。」ということで、今でも年間5,000人前後の方が亡くなられているそうです。
「だからと言って、あまり深刻に考え過ぎてもよくないのですが・・」と付け加えられました。
治療としては、気管を広げてあげるといいわけですが、そのような簡単な問題ではなく、(そのような症状が出てしまった方には、そうするより他はないのですが)、気管内の炎症を抑える治療を特に考えなければいけないとのことでした。
そういう意味で、吸入ステロイドを上手に使う事を勧めていらっしゃいます。(吸入ステロイドは、吸って使うので体全体に影響することなく、きちんと使えば安全だという事です。)
どの先生もスライド写真によるご説明です
そして、ピークフローメーターについても触れられ、「自分が1番良い時の数値を決めておいて、80%以上だと大丈夫、50%以下では、病院に行くというようにやって下さい。」ということです。
最後に、ご家庭で気をつける点については、寝具を洗ったり換気に気をつけるように!とのアドバイスでした。


つづいて、古庄先生の食物アレルギーに関して興味深いお話です。即時型と遅発型に例をあげてお聞きしました。

ある子供さんで、卵白に対するIgE抗体の数値が高く、たまごを除去していたところ、誤ってお兄ちゃんの弁当のたまごを食べてしまって、15分後に蕁麻疹が出て40分後にはショック症状になってしまったそうです。

このように1時間以内に症状が出るのを即時型と言いショック状態になり死に至るケースもあるそうです。
九州栄養福祉大学教授
こくらアレルギークリニック院長
古庄巻史先生
そういう意味で、「アレルギーがある方は、いろいろなものに対するIgE抗体を調べて、それに対する反応があるかどうかを確認しておく事が必要です。」と注意されていました。

そして、即時型の原因になる食物は、子供の場合次の順番で多いそうです。
1.たまご 2.乳製品 3.魚介類(アトピーの場合は、小麦粉)
その後、中学生くらいになるとだんだん少なくなってきて、大人で多いのは、
1.海老・かに 2.魚介類 3.たまごの順だそうです。

一方、遅発型は、8時間以降に症状が出てくるもので、2〜3日後に出るもの(アトピーなどのように)を言うそうです。

この例として、スライドに全身蕁麻疹が出ている未熟児の赤ちゃん(生後20日・体重1,500グラム)の写真です。
調べるとミルクアレルギーだったらしく、それをやめてアレルギー用のミルクに替えたところ数週間でツルツルになったそうです。

このようにアレルゲンとなる食物を除去していると、成長とともに未熟だった消化能力もしっかりして来ると同時に、免疫も強くなり食べられるようになるのだそうです。

※しかし、素人判断で一般的なアレルゲンとなりうる食物を除去していると、食べる物が少なくなり、必要な栄養分を取れなくなりますので、必ず、病院で何に反応しているかを調べて、その特定された食べ物だけを除去するようにして下さい。(IgE抗体ラスト法・実際にたまご等の三大食物を除去してみたり、また1つずつ付加していってみる試験などで特定できるそうです。)仮にたまごだけがアレルゲンだった場合は、1年間くらいたまごを除去すれば耐性が出来て除去を解除できるそうです。

また、喘息についても触れられました。
治療の三大基本方針、1.環境整備(家の中など) 2.適切な薬 3.心身の鍛練について話されましたが、特にダニについて、(ダニの死骸やフンなど、空気中に浮遊する物がアレルギーを誘発するということで)次のような事を気をつけるようにと言われました。
○家の掃除
○寝具は、1〜2週間に1度は1つの面に付き20秒くらいの掃除機がけ
○カバーは1週間に1度の洗濯
○ホコリが出にくいふとんの使用
○寝室に空気清浄機
○ふとん乾燥機
○ペットは確実にダニが増えるので飼わない

最後に、「たまごアレルギーがある者にとってワクチンは注意しなければいけないですか?」との質問に、「まだ問題が解決していないのでインフルエンザのワクチンはしないように。」とのお答えでした。

付け加えますが、庄司先生も古庄先生も、ステロイドの内服に関しては、重症の時、短期で使うという事で医師に任せて欲しいが、吸入ステロイドは特に推奨されていました。
実際、ヨーロッパなどに比べてに日本は吸入ステロイドの使用が極端に少ないそうで、最近は、子供にも積極的に使うべきだということも言われているそうです。

私見ですが、ステロイドに関して臆病になっていらっしゃる方が多いようですが、これは、アトピー商法などで間違ったステロイド知識が蔓延しているように思います。先生方のお話を聞くと、ステロイドは医師の指示にしたがって使うと有効な薬である事がよく分かります。
寺尾先生は、全般的にアトピーのメカニズムについてのお話でした。(医学専門用語が出てくる難しい話はここでは割愛させて頂きます。)

さて、アトピーがどうしてこのように増えたのか?という事ですが、アレルゲンの増加ということで以下の事があげられました。

○生活環境の変化 【ダニ、カビ、ペット(毛・羽毛・フン)】
○食生活の変化   【食品添加物、防腐剤】
○文明の発達    【化学物質】
国立療養所南福岡病院皮膚科
科長 寺尾 浩先生
○アレルギーが誘導されやすい環境 【大気汚染・環境汚染・ストレス】等があるようです。

特に、ダニの増加は住宅環境によるところが大で、気密性が高くエアコンが発達した今では、ダニが好きな環境(室温:20〜25℃ 湿度65〜75%)が保たれている事にもよるようです。
その中でも、絨毯、布団、ぬいぐるみなどをあげられました。

(ダニがアトピーを誘発する事は、皮膚にダニ抗原を貼り付けて行う実験で容易に分かるそうです。)

その解決法としては、雑巾がけを中心とした拭き掃除、換気、掃除機は必ず排気口を窓の外に向けて行うなどのアドバイスです。

その他、次のような物から誘発される方もいらっしゃるそうです。
シャンプー・リンス・化粧品・くつした・ピアス・イアリング・ネックレス・時計・ズック・・・
最後の講演者は、ユーモアたっぷりの三保木先生です。

写真のような格好で、ご登壇されました。これが、花粉を防御する基本のファッションだそうです。(会場に笑いがおき、和やかな雰囲気になりました。)皆さんは、この基本をもとにファッショナブルな服装を個人個人考えて下さいとのことです。

まず、マスクについては、高価な物も出ていますが、普通のマスクでもガーゼを2つ折三つ折にすると効果はあるそうです。
「めがねは、上と横に花粉を防御できるようにひさしが付いているものが良いですよ。」「今、流行の小さなめがねは効果がありません。」
耳鼻咽喉科三保木医院
理事長 三保木良美先生
「コンタクトは、花粉が入った時に目をこすったりするので、あまり勧めません。」
帽子についても・・・「花粉が、髪の毛の中に入ったら、なかなか取れないので、眠るとき枕などに付くとたいへんです。」
そして、服については、ウールや毛糸のセーター、毛足の長いポリエステルの物は花粉が付くと取れにくいので、レーヨンや木綿でできた花粉を簡単に落とせるようなじゃッケットを勧めておられました。
「首周りにもマフラーやスカーフを巻いて体に花粉が入るのを防ぎましょう。これで花粉症対策の服装は完璧です!」なんとも、面白い話し口調の先生です。

それからは、スライドを使って花粉の飛散状況を詳しくご説明いただきました。
前の年の夏の日照時間が多くて暑かったら花粉の飛散が多いという予測が付くそうです。

また、「帰宅して花粉を落とすのは玄関の外ですよ。玄関の中で服をはたいたらダメですよ。」と、またまたユーモア。しかし、「子供たちが外から遊んで帰って来て服をはたかずに部屋に入って来ると花粉が家の中に入り込んでしまいます。」の言葉に、あっそうか・・・!

さらに、花粉症は大人の病気と思われていましたが、今では4歳くらいの患者さんもいらっしゃるそうで、10歳くらいでは急激に増加するそうです。一方、40〜50代で急に出るケースも多いとのことです。

まとめとして、「花粉を防御し、家の中には入れないように気をつけ、適切な薬を使えば花粉症は、ある程度防げる」とのことでした。

つづいて、三保木先生と石川先生との対談形式で治療法を中心にお話がありました。

花粉症の薬は、長い期間を通して、その人その人に合ったものを使って治療していくもので、この人に効いたから他の人にも効くというものでもないという事です。

三保木先生にかかっていらっしゃる常連の患者さんは、以前からのカルテによって、その人に合う薬が分かっているので、症状が出る前に薬を飲まれているそうです。
熊本大学名誉教授
石川 哮 先生
最後に石川先生の方から、この会のまとめとして、「アレルギーのことを正確に理解し、適切な治療で、あまり神経質にならないように、リラックスして考えて欲しい」との言葉があり閉会いたしました。

私(若大将)も、このシンポジウムが北九州で開催されて過去三回とも出席しておりますが、毎回思うのが、素人の自己判断や、民間療法、誤った情報に踊らされると危険だという事です。このように真剣に研究されている先生方に感謝!



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