第13回九州アレルギー週間記念講演会
開始時刻前にもかかわらず、もう席についている皆さん。
講演中の写真は自粛しました。
主催:財団法人日本アレルギー協会九州支部 日時 平成19年2月25日(日) 13:00〜16:30 会場 天神ビル11F 10号会議室 テーマ 知っていますか?いろいろなアレルギー |
司会 西間 三馨 先生(日本アレルギー協会九州支部長・国立病院機構福岡病院長 講師 「花粉症」 今年のスギ花粉症? 岸川禮子 先生(国立病院機構福岡病院アレルギー科医長) 花粉症の治療 宗 信夫 先生(宗耳鼻咽喉科医院院長) 「食物アレルギーの献立」 池本美智子 先生 (国立病院機構福岡病院栄養管理室長) 「皮膚のかぶれ」 化粧品・薬など 久保田由美子 先生(福岡大学医学部皮膚科助教授) 「喘息」 成人 庄司俊輔先生(国立病院機構福岡病院副院長) 小児 濱崎雄平先生(佐賀大学医学部小児科教授) |
《若大将からこのレポートに関して一言》 このシンポジウムは、アレルギーに悩む一般の皆さんに正しい知識を身に付けて欲しいと アレルギー専門医の先生方から、ボランティアで開催していただいております。 というのも、アレルギーに関しては特に、医師と本人や家族が協力し合って治療していかなければ 十分な成果が上がらないものだからです。 そういう意味でも、「このような会に参加できない方々にも皆さんから教えてあげて下さい。 また、教えられるようにしっかり聞いて下さいね。」と西間先生も以前からおっしゃっておられました。 という訳で、私は、このサイトを通じて皆さんに少しでもお役に立てればと考えております。 毎年レポートを書いておりますので(多少重複することはありますが)、今回は、以前に書いていない 内容や印象に残った部分だけを私の言葉でレポートしています。 日本アレルギー協会 一般会員 須崎弘己 |
西間 三馨 先生 全国的にも有名なアレルギーの権威で、その話しぶりはユーモアもあり、私たちにも分かりやすく解説して頂ける素晴らしい先生です。 開会のご挨拶の後、早速、各先生の講演に入りました。 今年も、アレルギー専門医の有名な先生方で、このような会でなければ、滅多にお会いできないほどの豪華メンバーです。 「花粉症」 今年のスギ花粉症? 岸川禮子 先生 今年の花粉飛散予測は、2年連続で少なめだそうです。 福岡を例に挙げると例年の40%〜110%とのこと。こんなに開きがあるのは、気温、湿度、日射量によってかなり違うからだそうです。 また、少なめの花粉でも反応する人は悩まされるし、飛散量の多い日もあるでしょうし、油断大敵という事ですね。 そう意味でも花粉の飛散状況をリアルタイムで確認できる環境省花粉観測システム 愛称「はなこさん」http://kafun.taiki.go.jp/ は(地域は限定されますが)、参考になると思います。 また、皆さんの地域にも花粉の飛散状況を公開しているサイトがあります。県名+花粉状況等でキーワード検索すると見つけられますよ。 花粉症の治療 宗 信夫 先生 まず、初期治療は非常に効果的で、花粉が飛び始める前に病院に行かれると軽度の症状で乗り切れるケースが多いことは以前のレポートに書いております。 そして花粉症対策としては、とにかく花粉を避けることで、メガネやマスクの着用は皆さんもご存知の通りですね。ところで、この時期市販の点鼻薬を愛用される方も多いと思いますが、これに頼りすぎると、花粉が飛んでいない時期にも点鼻薬を使わないと鼻が通らなくなるような薬物性鼻炎に悩まされることになるかもしれないそうですので皆さんご注意を! また、勘違いされやすい治療法としてレーザー手術を考えられる方もいらっしゃることでしょう。 ですが、これは根本的な治療ではなく、数ヶ月の効果しかないそうです。 宗先生が1番勧められたことは、根本的に改善される「減感作療法」です。 これは、抗原(アレルゲン)エキスを注射して体を次第に抗原に慣れさせて、アレルギーが起こりにくい体質に変えていく治療法です。 しかし、この療法は、まず、信頼できる先生が必要!私(若大将)の印象としては、かなり詳しい先生にお願いしないと心配なこともあるようです。 そして、長くかかること。3〜5年ほどかかるようです。でも、この際、根本的に治したい方は、かなり効果的なようです。 「食物アレルギーの献立」 池本美智子 先生 まず、どの食べ物にアレルギー反応を起こすのか?を調べることが大事であることは言うまでもありませんが、幼児期に多い食物アレルギーにおいて除去食を続ける場合、別の食品で栄養を補う必要があります。たんぱく質や鉄分は、白身魚や肉類、納豆、馬肉(赤身)、マグロ、大根、ほうれん草、干しひじき・・・等の(本人が)アレルギーが出ない食べ物で補給することが出来ます。 一方、今ではビックリするほどの代替食品があります。 アレルギー用ミルク、ノンエッグマヨネーズ、ナタネマーガリン、ノンオイルツナ缶、アレルギー用ウィンナー、アレルギー用カレールー・・・ 先生もおっしゃっていましたが、簡単にインターネット等で買える時代です。以前は、除去食をすると栄養面が心配な時代もありましたが、今では、その心配も要らないほどだそうです。 これらの物も使って、美味しい献立を作る研究をされている先生は、「食物アレルギーの献立」をたくさん持っていらっしゃいます。 「皮膚のかぶれ」 化粧品・薬など 久保田由美子 先生 かぶれに関しては、何が原因だったのかを調べることが第一で、パッチテストという検査方法で確定した後、それを排除することに尽きるようです。 化粧品などのかぶれは、かなり少なくはなっていますが、いろいろな原因が重なって出る場合もあるそうで、もし、かぶれが出たら速やかに使用を止めなければなりません。 もちろん、腕時計やピアスといった金属アレルギーなどの一般的なものから、その人固有の原因でかぶれることもあるのでキチンと検査することが大事なようです。 また、付け薬、湿布薬を夜貼っておいて、普通は剥がして外出するわけですが、その部分に光があたってかぶれることもあるそうです。 とにかく、何故かぶれたのかは自己判断ではなく病院に行った方がよさそうです。 「喘息」 成人 庄司俊輔先生 まずは、喘息の仕組みについてスライドを使いながら詳しく説明していただいた後、(これは、以前のレポートに書いておりますので割愛させて頂きます。)吸入ステロイドによる予防治療の重要性を強調されていました。 昔の治療は、発作が起きたら気管支拡張剤で気道を広げてあげるというのが主流で、喘息治療=気管支拡張剤が定番だったのですが、今では、日頃から気管支の炎症を抑えるという予防治療が重要視されています。(これも前回のレポートに書いておりますが重要なことなので今年も書いておきます。) それには、吸入ステロイドが1番有効で、安全な治療法だそうです。 とかくステロイドと聞くと、その副作用に過敏になられる方も多いでしょうが、吸入ステロイドは安全で、危険なのは内服ステロイドだそうです。 庄司先生は、よく船の火災に例をとって説明されます。 船で火災が発生した時に、その火にだけ水をかけて火を消すのが吸入ステロリドなので、被害はほとんどありません。一方、船の一部にしか火災がないのに船全体に水をかけてしまうと火は消えますが、船も沈んでしまうかもしれないのが危険な内服ステロイドというわけです。 では、どうして気管支拡張剤ばかりの治療がよくないかというと、発作時に気道は開くのですが、気管の炎症は悪化し続ける傾向にあるので、(気管の炎症を抑える効果はないため)気道は知らず知らずに狭くなってしまい、ちょっとした発作でも、かなり厳しい状況になり、気管支拡張剤でも以前のようには広がらなくなるようです。 発作を繰り返すことが続くと、気管支の壁に変化が起こり発作の出ていない時でも、正常の状態に戻りにくい気管支になってきます。 リモデリング ←これでキーワード検索すると詳しいページがたくさんあります。 ともかく、以前は年間7,000人が喘息によって死亡しているという報告もあったのですが、治療法もかなり確立して、昨年は、3,000人と減ってきているそうです。(それでも恐いですね。) 庄司先生は、リモデリングにならないように!と締めくくられました。 「喘息」 小児 濱崎雄平先生 やはり遺伝的要素が多いことは認められましたが、環境因子によってなる場合も多く、お部屋の環境整備にも気をつけて下さいとスライドで好ましいお部屋の説明をされました。(これは、余分なものを置かない、絨毯をやめてフローリングにする、厚手のカーテンは使わない・・・など、ご存知でしょうから割愛します。) もちろんヒョウヒダニについても説明され、布団の中には10万匹から100万匹ほど居る・・・と布団の重要性も強調されていました。 喘息患者は増えており、現在クラスに2〜3人は治療が必要な子供が居るそうで、まず、アレルゲンを調べる、肺機能を調べる、気道の過敏性(炎症)を調べるなどの検査が必要で、それから治療ということになるようです。 また、小児喘息の場合、大人の喘息と違って適切に治療をすれば半数くらいは治る(症状がほとんど出なくなる)そうで明るい希望も持てますね。 一方、忘れがちなのが運動で、運動誘発性喘息が起こりにくいスイミングが代表的ですが、普段から腹式呼吸の練習をすることも効果的なようです。 質問タイム 約1時間も質問タイムが用意してありましたが、全然足りませんでした。 それだけ皆さんはわらをもすがる思いのようです。 その中でも一番印象的だったのが、喘息治療としてある病院から内服ステロイドを処方され続けている方からでした。「先生方のお話を聞いて不安になりました。私の場合、このまま内服ステロイドを続けていいものでしょうか?」とのことです。 宗先生の講演内容を前述したとおり、内服ステロイドは最後の手段的ものです。 会場の先生方は、その方の喘息が重度のものではないと判断され、「どこの病院でしょうか? 閉会後に、教えて下さい。」と、その方のフォローを考えておられるようでした。 私なりのまとめ キチンとした検査が重要で、適確な治療を気長に行うことに集約されると思います。 しかし、安心して任せられる医師に出会うことが前提です。 各地にアレルギー科はあるものの、医師によって診断やアドバイスが違って迷われた経験もおありでしょう。私も以前はそうでした。 会場の先生方のように素晴らしい医師に出会えればいいのですが・・・ 日本アレルギー協会は、全国組織です。 ホームページもあります。 ご自分にあった(その症状に詳しい)病院や医師を紹介して頂けるかもしれません。 |