内容レポート(若大将レポート) 《若大将からこのレポートに関して一言》 このシンポジウムは、アレルギーに悩む一般の皆さんに正しい知識を身に付けて欲しいと アレルギー専門医の先生方から、ボランティアで開催していただいております。 というのも、アレルギーに関しては特に、医師と本人や家族が協力し合って治療していかなければ 十分な成果が上がらないものだからです。 そういう意味でも、「このような会に参加できない方々にも皆さんから教えてあげて下さい。 また、教えられるようにしっかり聞いて下さいね。」と西間先生も以前からおっしゃっておられました。 という訳で、私は、このサイトを通じて皆さんに少しでもお役に立てればと考えております。 毎年レポートを書いておりますので(多少重複することはありますが)、今回は、以前に書いていない 内容や印象に残った部分だけを私の言葉でレポートしています。 日本アレルギー協会 一般会員 須崎弘己 日時:平成22年2月14日(日) 13時〜16時30分 会場:天神ビル 11F 10号会議室 テーマ「アレルギーと日常生活」 司会 西間三馨先生(日本アトピー協会九州支部長) 岩永知秋先生(国立病院機構福岡病院長) 1)「鼻アレルギー」 講師:黒野祐一先生(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉科教授) 2)「食物アレルギー」 講師:柴田瑠美子先生(国立病院機構福岡病院 小児科部長) 3)「喘息:成人」 講師:岩永知秋先生(国立病院機構福岡病院長) 「喘息:小児」 講師:小田嶋 博先生(国立病院機構福岡病院 副院長) 4)「アレルギー性結膜炎」 講師:内尾英一先生(福岡大学医学部眼科 教授) 5)「アトピー性皮膚炎」 講師:古江増隆先生(九州大学大学院医学研究院・医学部皮膚科教授) 6)「アレルギーとストレス」 講師:久保千春先生(九州大学病院長) いつものように、西間先生の司会のもと 今年も滅多にお会いできないスゴイ先生方による講演会が始まりました。 1)「鼻アレルギー」 講師:黒野祐一先生(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉科教授) 一通りの鼻アレルギーのメカニズムについて説明が終わった後、 花粉症についてお話しいただきました。 花粉情報の使い方 はなこさん http://kafun.taiki.go.jp/ 今日は、花粉が多そうだから出掛けるのを控えよう、もしくは、万全の対策(服装等)を して出かけよう。または、今日は、花粉の量が少なそうだ。。ちょっと楽かなぁ〜等、 いつもいつも神経質になって緊張が続くのは疲れるし大変。 メリハリをつけて対処するのに役立つのが花粉情報です。 本格的飛散前に病院へ 花粉症の方は、症状が出る前に病院で治療してもらうのが効果的です。 その方が効果が大きいし、症状が出た後も薬の量が少なくて済むそうです。 市販薬について 病院に行くのが面倒なので市販薬に頼りがちですが、眠気を誘う事が多く、 ボーっとした日常生活になり学力低下や運動力低下になりやすいです。 しっかり睡眠をとっても眼がさめにくい状況に陥ります。 そういう意味でも、きちんと病院から出されるお薬の方が、そういう事もなく効き目自体 優れています。 (学力低下も見られず特に受験生などは市販薬より病院の薬がいいようです。) 花粉症でも何もせず放置していると・・・ 過敏性が高まり症状がひどくなる恐れもあるので、自分に合う薬を医師と相談して 処方してもらう事が大切です。 、 2)「食物アレルギー」 講師:柴田瑠美子先生(国立病院機構福岡病院 小児科部長) 乳幼児に多く、小学校の入学前には比較的少なくなりますが、 アトピー性皮膚炎と食物アレルギーは別物と考えた方が良いです。 除去食をしたからと言ってアトピーが良くなるわけではありません。 必要最小限の除去食 まず、きちんと病院で食べられない物を調べてもらう事が1番大事です。 気を付けなければいけないのは、あれもこれもと除去して栄養が低下すること。 食べられない物でも加熱すると食べられるケースがあるそうです。 やはりきちんと検査してもらい、食べられるものは多い方が良いですからね。 たまごが駄目だから鶏肉も食べない。。。そんな思い込みもあったりするそうです。 最近気になる食べ物 たまご、乳製品、小麦・・・等はもちろんですが、フレッシュなフルーツ(キュウイ、バナナ アボカド、パパイヤ・・・)や、魚卵(特に、いくら)に反応してしまうケースが 増えているとか・・・ 外国で多い、ピーナッツ、カシュウーナッツも増えつつある。。。 もし食べてしまったら。 出来るだけ早く病院へ・・・なのですが、まず口をゆすぐ、お薬があれば飲む、 エピペン(アドレナリン自己注射器)を打つ!とにかく大至急医療機関へ。 エピペンは少々高価(1年間の有効期間で1万5千円程度)ですが効き目があり、 打ち方を習って使うものですが、救急車の中で代わりに打ってくれることもあるそうです。 自己判断の危険性 病院に行かずに自己判断で除去食をやっていて、栄養低下により 病院に搬送され亡くなったケースが先日あったそうです。 3)「喘息:成人」 講師:岩永知秋先生(国立病院機構福岡病院長) 昔の治療は、発作時に気管を拡張する治療だけだったが、日頃から気管の炎症を 抑える治療が考えられ飛躍的に進歩した。 吸入ステロイド これが1番の薬で、日頃から気管の炎症を抑えてくれる事により、発作も少なくなり いざ発作が起きて気管支拡張剤を使っても効果がないという事態を回避できる。 また、副作用もほとんどなく、安全です。 吸入の場合、気管や肺までにしか及ばず、服用薬とは違うので全身に回る事もなく 何も心配はありません。 発作があった時だけの治療では駄目! 喘息は、今でも年間約2000人余の死亡例がある病気です。 (子供に少なく高齢者に多い) 発作が無い時は、ついついお薬や治療もさぼりがちですが、気管が炎症している 慢性的な状態ではマズイです。 発作が起きて病院に行って気管支拡張の治療を受けても効かないことがあったら 大変です! 発作が無い時でも、医師の指導に従って吸入ステロイドによる予防治療が必要です。 「喘息:小児」 講師:小田嶋 博先生(国立病院機構福岡病院 副院長) 喘息があっても、医師の指導のもとにきちんとコントロールしていれば普通の生活が 送れます。そしてコントロールできる病気です。 薬、環境整備、運動 薬は医師の指導のもとにきちんと続けることは当然ですが、ダニやハウスダスト対策も 重要です。布団などにはダニが多いのでケアをお願いします。 よその家に遊びに行き、布団の上でとび跳ねたり、ペットがいて発作が出たり等の ケースも多いようです。 そして運動については、運動後に発作が起こる事がありますので、 医師と相談の上、適切にする必要があります。 発作を恐れて運動をさせないというよりも、出来るだけ他の子供と同じように運動させる 方向に考えて下さい。(医師と要相談) 体力向上も(気管の炎症が下がる)必要なことです。 学校では・・・ 黒板のチョークの近くの席は外してもらう。 掃除の時はマスクを着用。 毛のある動物の係りは外してもらう。 マラソンは、寒い時期と冷たい風が心配なので医師と相談。 発作が出たら・・・ まず休む。水を飲ませる。腹式呼吸をさせる。治療薬を使う。 日常生活 朝ご飯をきちんと食べる。ここにも出てきた朝ご飯。喘息のためにも良いそうです。 吸入ステロイドの後にうがいや歯磨き。(お薬が口の中に残るのを防ぎます。) 学校から帰って来ての家族の一家団欒も大事です。 (自我を上手に出せるようになる。) 寝る前に腹式呼吸。。。やっている内に眠たくなる。。。 4)「アレルギー性結膜炎」 講師:内尾英一先生(福岡大学医学部眼科 教授) 花粉症で目がシュパシュパ。。。 一方、通年性のアレルギー性結膜炎も、、、きちんと医師の診断を受けて下さい。 市販のカップ式で目を洗うよりも流水 最近良く売っている小さなカップの中で目を洗うと瞼や目の周りの花粉や雑菌が 目に入る恐れもあるので、蛇口が上を向いているようなもので、流水により目を洗う のがいいと思います。 春季カタル これは要注意で、ステロイド点眼薬を適切に使うのが有効ですが、症状をあなどり 運び込まれる方もいらっしゃるとか・・・ 目のゴロゴロが治らない。。。そんな方は早めの受診を! コンタクトレンズ ハードタイプだったらまだいいのですが、長く使うタイプのソフトタイプは良くありません。 ソフトタイプであれば、使い捨てタイプをお勧めします。 ドライアイ 最近増えているのがこれですね。長く目が乾くと眼球を傷つけますね。その上に花粉症 などなど。。。心配です。とにかく病院へ。。。ですね。 5)「アトピー性皮膚炎」 講師:古江増隆先生(九州大学大学院医学研究院・医学部皮膚科教授) かゆいと感じるのは脳です。ストレスがかゆみを増すケースもあります。 スキンケア 何と言っても日頃のスキンケアが1番大事です。 分かりやすい例(データ)として・・・ 一定人数の方にまず炎症を抑えるまでステロイドを使い、 症状が治まったら2週間保湿剤だけを使います。 そして、その後保湿剤を使い続けるグループと何もしないグループに分けます。 当然何もしないグループではまた症状が出るのですが、保湿を続けた人は その症状が明らかに軽くて済んでいます。 しかし、保湿を続けても、また症状は出ますのでステロイド治療が必要になります。 とにかく、症状を抑えてあげることが大事で、夜もぐっすり眠れる状態を続けている内に だんだん良くなっていく!そういう事が大事です。 液体せっけん× 濃い過ぎるためにしっかり泡立ててタオルを使って下さい。 身体を拭いた後 入浴後に身体を拭いた後、時間をおかずに保湿をして下さい。 皮膚が湿っている内に保湿剤を使う事が有効です。 完全に乾いてしまう間、時間をおいてから保湿をしてもあまり効果が期待できません。 保湿剤は手のひらで伸ばすように。 保湿剤は指で塗っても時間がかかって大変です。 手のひらで、皮膚のしわに沿うように塗って下さい。 ステロイドの副作用 医師の指示通りに使えば、全身性副作用が起こることは100%ありません。 服用ステロイドと違って皮膚にステロイドを使っても心配は極めて少ないです。 皮膚からの吸収は少なく、例えば、毎日5gのチューブを4本ずつ塗り続けない限り 副作用が出ることはありません。 日本では、5gのチューブしかありませんので、そんなことは起こり得ません。 外国のチューブは歯磨き粉チューブのように大きいので間違いがあるかもしれませんが、 日本ではそんなことはあり得ません。 むしろ、もうちょっときちんと塗った方が良いくらいです。 「フィンガーチップユニット」といわれているもの。 これは、大人の手のひら2枚の広さに対して、 大人の人差し指の第一関節の長さくらい(約0.5グラム)の薬の塗布が 基準とされています。 そして、アトピー症状の跡(色素沈着)があっても、ステロイドの副作用ではなく、 皮膚炎症の後に起こりうる事で、日光で日焼けするのと同じで半年程度でとれるもの だそうです。(もちろん医師にしっかり診てもらってさぼらない事ですね。) 局部の副作用として、その部分が多毛になったり皮膚が薄くなるようなことも ありますが、これも医師にきちんとかかって、診てもらい続ければ心配する事では ありません。治まるそうです。 皮膚が硬くなる 皮膚が硬くなっている部分があると、保湿しても、そこにアトピーの根があるような 感じで再発します。 医師の指導のもとに柔らかくなるまで治療すれば大丈夫です。 良い状態が続き、よく眠れる時間が伸びてきて改善していく。 病院にかからず誤った民間療法で済まそうとすると、悪い状態が続き、長くそんな状態を 続けていると良くなると言うより取り返しがつかない状況になります。 とにかくステロイドを医師の指導通りに使い炎症を抑え、良い状態を長くすることが 改善につながります。 もちろん、保湿剤等のスキンケアはずっと続ける基本的な事です。 6)「アレルギーとストレス」 講師:久保千春先生(九州大学病院長) 精神状態とアレルギーは深くかかわりがあります。 ストレスで皮膚を掻きたくなったり、かゆみを感じたり。。。 脳との関係もご説明いただきましたが私には理解不能。 ストレス ストレスがあると・・・ それを解消する方法は人それぞれ持っています。 うまく解消できる! ↓ そうでない場合、キレたり問題行動を起こしたり・・・ ↓ どちらでもなく、体に異常が出るケース! それによってアレルギーが出る。。。やはり深い関わりがある。 ある実例を挙げられました。 40歳の公務員。性格は悩み易いタイプ。いつも不安。 喘息の治療を20年続けるが治らない。 そこで心理療法。 ↓ 改善 ところが、その方は、「仕事に戻りたくない。」「戻るのが怖い。」 そして、喘息の発作が起こらなくなったら休むことも出来ず逃げ道がない。。。 発作が起これば休めるので逃げ道になっていた結果、20年も治らなかった例です。 せつない話でした。。。 この後、質問タイプで講演頂いた先生方が前に並んで座られ、西間先生が座長となり 会場の質問に答えて頂きます。 ですが、今回は、私の質問を事前にファックスしていたのです。 |
有難い事に全部の先生が真剣に答えて頂きました。 インターネットで誰でもが情報を得る事が出来る世の中に。 今では、病院にステロイドの副作用を心配される患者さんは、ほとんど居なくなりました。 それは逆に言えば、インターネット等でステロイドの副作用をあおられ危険だと思った方は、 そもそも病院に来られないということも考えられますねぇ。 ステロイドが悪者になっているのが残念です。 薬と言うのは、効き目があるから薬になっています。そして臨床が繰り返され、安全性も 確認され、だからこそ認可されて薬になります。悪いモノが認可されることはありません。 治療しないでいると取り返しがつかない状況に。 『喘息を中途半端で放っておくと、気管支が硬くなって、喘息が治らなくなる』 リモデリングが心配です。 アトピー性皮膚炎もひどい状況が長く続けば治りにくくなります。とにかく、良い皮膚の状態に 早く戻してあげて、その状態を保ちながら安定させてあげる事が最も大事です。 そして、時間が経って症状が出なくなっていた。。。こういうことです。 何故、塗り薬なのに、(服用でもないのに)副作用を言うのか・・・おかしいことです。 だからこそ、こういう講演会(啓蒙活動)が必要 アトピー商法に惑わされないように正しい知識を持って頂くためにも、こういう啓蒙活動を 続ける事が大事ですね。 ガイドラインが確立していますので安心して下さい。 ステロイドによる治療はガイドラインにより確立していますので、どこの病院でも安心して 治療を受ける事が出来ます。 医師は、なかなか相談し辛い。? 医師は、そういうつもりはなくても忙しそうに見えるもののようで、相談し辛いらしく そんな時に、インターネットや知り合いに丁寧に説明を受けると、そちらを信じてしまうような 事があるのかもしれません。 ステロイドの不安をあおって商品販売につなげる。 病院にかかってもステロイドを処方されるだけだと言い、ステロイドを悪者にして、 商品販売へと誘導する。惑わされてはいけません。 ステロイドは、医師の指示通りに使えば安全で効き目がある良い薬です。 説得する事もあります。 患者さんの中には、ステロイドを拒否される場合があります。 そんな時は、詳しく丁寧に説明しています。他の全患者さんも、このように治療を受けていて 効果があり安全です。と そして納得して頂きます。 ---------------------------------------------------------------------- 若大将からひと言 ともかく、ご講演頂いた先生方は、全国でも有名で最高権威の専門医です。 なかなか、ちょっとやそっとでは直接診て頂く事が出来ないスゴイ先生方です。 その先生方が、皆さん一致した意見で、 「ステロイドは医師の指導で使えば安全で有効な薬。安心してほしい!」と きっぱり言って頂きました。 疑問の余地を残す点がないほどキッパリ! 皆さんも惑わされずに、きちんと病院にかかって診て頂きましょう! アレルギーに良いと販売されている商品を使われても結構ですが、だからと言って 先生方を信用しないで薬を使わないと言うのは、どう考えても変な話です。 病院にかかることを拒む考え方の集団で、亡くなるニュースをご覧になるでしょう! その時あなたはどう思いますか? 私は、病院やお医者さんを拒否して、民間療法だけを信じるのはこれと同じことのように 思えます。 先生方は、すごい知識と経験をお持ちです。 皆さん冷静に考えてみて下さいね。 |